新年初コラムとなります。また大変な状況からのスタートとなり不安定な日々が続いておりますが、遅ればせながら、今年も宜しくお願いいたします。
昨年最後のコラムでSDGsの必須項目、気候変動問題への取り組みの緊急性について解説しましたが、今月、日本スポーツ界からビッグニュースが配信されました。
Bリーグ1部に所属する名古屋ダイヤモンドドルフィンズが、世界スポーツ界が一丸となって気候変動問題に取り組む「スポーツ気候行動枠組み」に、1部所属プロチームとして日本から初めて署名したのです。
*ドルフィンズのニュースはこちら
https://nagoya-dolphins.co.jp/category/csr/unfccc.html
「スポーツ気候行動枠組み」は、COP24で発表された国連とスポーツ界が連携して気候変動問題に取り組むイニシアチブですが、スポーツイベント実施に際して、その事業運営を持続可能なものにすることと、スポーツの力を活用した啓発活動を実施していくこと、というふたつの切り口から、以下の5つの原則があります。
- 原則1 より大きな環境責任を担うため、組織的な取り組みを行う。
- 原則2 気候変動の全般的な影響を削減する。
- 原則3 気候変動対策のための教育を行う。
- 原則4 持続可能な責任ある消費を推進する。
- 原則5 情報発信を通じ、気候変動対策を求める。
枠組みの全容については、国連情報センターによる日本語版がこちらにあります。
https://www.unic.or.jp/files/c6509b8eadff5384180a1fd439669a4b.pdf
「スポーツ気候行動枠組み」には、ドルフィンズが署名した昨年12月時点ですでに180以上の著名スポーツ団体やプロリーグ、チーム等が署名団体として登録していましたが、今回名古屋ダイヤモンドドルフィンズが署名したことの意義は、以下の2点にあると思います。
「スポーツの力」を最大限に活用できるトップリーグ所属チームによる行動
ひとつは、ドルフィンズはBリーグ1部リーグに所属する強豪チームであること。日本のトップリーグ所属チームからはまだ署名がなかったところ、初の署名団体として登録されたことです。通常プロチームは事業ライセンスを必要とし、各地域の最高峰のチーム、ブランド力を擁し、ファンや地域から憧れの存在として認められています。このような、一定の地理的マーケットを独占することを許されるビジネスは特異であり、一般のビジネスではありえないことです。そういう地域に唯一のプロチームだからこそ、ファンの意識改革・行動変容を起こすための影響力は大きい。その特殊な力に、国連は期待をしており、今回特別にUNFCCC(国連気候変動枠組条約)のプロジェクト担当者から歓迎コメントまでいただけたのは、その期待を示すものだと思います。
ドルフィンズのプレスリリースにある国連からの歓迎コメントにもあるように、今後他の日本のトップチームも署名し、地球とスポーツ環境を未来につなぐための「世界代表」チームに加わっていただけたらと思います。
世界の錚々たるスポーツチームと同じステージに
そして、もうひとつの意義は、この枠組みは、「世界スポーツ界」をひとつのチームにするものだということ。それによって、Bリーグが目指すNBAのチームとも「同じステージで」活動ができることです。このブランディングメリットは計り知れません。
「スポーツ気候行動枠組み」の署名団体は、原則に則った行動を遂行するとともに、署名団体のワーキンググループの活動にも(任意で)参加します。現在では4つのワーキンググループがあり、世界トップリーグやチームの関係者が集い、より効率的にタスクを遂行していくための議論が活発に展開されています。「地球を守る」というミッションについては、どの国のどのレベルのスポーツチームもみな「チームメイト」です。
ちなみに、署名団体は、国連のこの枠組みの限定ロゴとのコンポジットロゴを作成可能で(広報活動にのみ使用可)、他に広報活動用に準備されている映像には、マイケル・ジョーダン氏や故コービー・ブライアン氏などの超一流アスリートも協力しています。
オンコートの実力差、PL上の利益の差額は大きくとも、せめて社会に対する心構えだけは、対等でありたいですね。
署名団体になるには
世界スポーツ界と一丸となって気候変動問題に取り組むこのチームに加わるための手続きは、物理的には、たった1枚の書面にサインをするだけです。今回の手続きで私も驚きましたが、本当に数行、数段落程度です。
ただ、まずはコミットをして、そのコミットに見合う行動をする、という順序というだけで、もちろん署名だけすればよいということではありません。
では具体的に何をするかというと、一番大きなタスクとしては、事業運営に関わる「CO2排出量の計測」です。これは、専門的な内容になり、CO2排出量計測を事業としている会社がありますので、外部委託することになります。
最近参加したIOC協賛企業主催のウェビナーで、参加者に「CO2計測をしていない企業とパートナーするか」という質問をした時、「No」と答えた方がほぼ全員で驚きましたが、今後は自社事業によるCO2排出量を把握しておくこと(さらに削減努力をしていること)が、ビジネス上の信用を得る第一歩となりそうです。
ドルフィンズの署名を記念して、来週木曜28日夜に実施する「スポーツxサステナビリティ・フォーラム2021」の第2部で、北米プロチーム初の署名団体であるニューヨーク・ヤンキースをお招きしてのセッションを実施しますので、是非ご参加ください。ドルフィンズご担当者様にも、現場のタスク等について、簡単にご説明頂く予定です。
▼詳細・お申込はこちら
https://sportforsmile2021.peatix.com/view
(文:梶 川 三 枝)